清宮の夏が終わった。進路に関しての明言は夏以降とされており、今後の動向に注目が集まるが、そこで現在、外野の人間が好き勝手に持論を広げて議論しているのが、来季清宮がプレーするフィールドはどこがよいのか、ということである。
一野球ファンの楽しみとして、私も、私なりに考えた『清宮幸太郎君 夢への道しるべ』をここで紹介したい。
（※日本ハムは大谷翔平契約交渉時に『大谷翔平君 夢への道しるべ』と題した若年期海外進出に関する資料を作成している）


まず、清宮が目指しているとされるメジャーリーグでの活躍であるが、日本球界でいまだかつてない問題を清宮は抱えている。それは、清宮が一塁手であるということだ。

【過去の渡米選手】
捕手：城島健司
一三：中村紀洋
二遊：松井稼頭央、井口資仁、※岩村明憲、西岡剛、川崎宗則
外野：イチロー、新庄剛志、田口壮、松井秀喜、福留孝介、青木宣親
※岩村は日本では三塁、MLBでは二塁を守った。

歴史を彩ってきた数々の強打者がいるにもかかわらず一三塁手のメジャー移籍が難しいことは過去が証明している。その原因となっているMLBの長距離砲や一塁手の選手層については、細々とここでわざわざ述べるまでもないだろう。

清宮をメジャーにどうやって送ろうが、必ずその日までに解決しなければならないのは「一塁以外を守れるようにならなければならない」という事項なのである。清宮を指名しようとしている球団には、まずこのことを念頭に置いてもらいたいし、もちろんそれは早稲田大学野球部関係者にも理解していただきたい。

そうなると現実的に考えて、今後清宮が朝から晩までノックを受けなければならないのは三塁か外野ということになる。

私としては、素人意見として、清宮の打撃能力はプロ1軍の打席に立たせなければならないレベルにあるとみている（1年目から打ちまくって大活躍という意味ではなく、より高いレベルでの試行錯誤が能力に適しているという意味で）。この私の発言は「予測・勘」にすぎず、裏付ける根拠も保証はない（２年前に田中正義から中安を放ったのには驚いたが）。だが、２軍戦で見るボールと１軍戦で見るボールに違いはあるが、２軍の球場で受けるノックと１軍の球場で受けるノックに違いはないはずである。

清宮に必要なのは、「１軍での打席経験」と「他ポジションを守る練習」を並行させられる環境である。

ここからが本題。私はここで安易に守備位置をレフトに飛ばしてほしくないのである。
私は清宮に内野手としてまずプロとして最低限の守備能力と動作を身に着けてもらいたい。内野手がプロ入り後外野に転向して大成するケースが多いが（有名どころでは陽など）、内野手時代に鍛えられたスローイングの精度・強さ・動作の速さ、左右の打球への反応・判断の速さが生きてくる。

そのうえで最終形態として、平均レベルで守備をこなせる「４番レフト清宮」を誕生させてほしい。いや、この「内野手下積み時代」なしに、外野手清宮を天然芝主体のアメリカに送ることは危険すぎやしないだろうか。海の向こうにはただでさえ打撃のライバルが多いのだ。それも過去に、松井以外誰もまたもに渡り合えなかった「パワーヒッター」という枠でだ。

守れる、というのはそれだけ重要になってくる。決して俊足とは言えない清宮が外野を守るとなった時、守備範囲に直結する左右の打球に対する一歩目の速さ。リトルリーグ時代には130キロ近くを投げていたスローイング能力を最大限に増幅させるための送球動作。これらのスキルを可能な限り最大限引き出してあげる計画と責任が、来年以降清宮を獲得する球団には必要なのである。

そういった点を踏まえて、清宮幸太郎に進んでほしいと私が勝手に思う球団は一つ。
広島東洋カープである。

一塁を守る新井貴広は40歳であり、世代交代が急務。まずは一塁で出場しながら、三塁守備を鍛えることが可能だ。球場は左のパワーヒッターに有利に作られており、なによりマツダスタジアムは内外野ともに天然芝である。昨年度から始まった石井琢、迎、東出の打撃コーチ3人体制は2015年にチーム打率セリーグ5位の.246だった攻撃陣をわずか一年でリーグトップの.272にまで押し上げた指導力がある。

またダルビッシュ風に言えば、日本野球は2Aクラスであることから、アメリカに直接行くのであればまずはそれぐらいのレベルから使ってもらえる契約内容であってほしい。くれぐれも向こうの天然芝に対応できず、下積みもないまま外野に回るようなことにならないでほしいと思う。すべてはメジャー昇格と、その競争に勝つために。

清宮獲得に必要なのは資金力でもポスティングの可否でもなく、メジャーまでの道筋と計画をしっかりと描いてあげることなのではないか、と思うのである。