それまで、スポーツを観戦して泣いたことはありませんでした。
自分自身がプレーして、結果、悔し涙を流したりしたことはあったけれど、正直、他人のプレーを見て、そこまで感情移入したりは出来ないから…。
でも、あのとき。
あの瞬間。
思わず涙が溢れました。
2009年。1年を締め括る師走の風物詩・グランプリ有馬記念。
年の瀬、少し茶枯れた芝の上を、その年のターフを沸かせた精鋭が駆け抜けます。
舞台は中山競馬場の芝2500m。非常にトリッキーであり、難しいコース。ゆえに、これまで幾多の名勝負が繰り広げられてきました。
ですが、その有馬記念の長い歴史において、三歳牝馬が頂点に立ったことはありません。
(訂正:スターロッチが優勝していました)
ヒシアマゾンには怪物ナリタブライアンという巨大な壁が立ちはだかり、また、ダイワスカーレットにはマツリダゴッホという伏兵が牙を研いでいました。
けれど、2009年。遂にその壁が破られようとしていました。
この年の桜花賞、優駿牝馬を制し、札幌記念2着、秋華賞2着、エリザベス女王杯3着から、この大舞台に駒を進めてきた女傑ブエナビスタ。
ここ3戦は勝ち切れませんでしたが、どんなレースでも後方から軽やかなフットワークで飛んでくるその姿は、本当に美しかったです。
そのレーススタイルからファンも多く、歴戦の古馬や同世代の牡馬を抑え、堂々の1番人気に支持されました。
新たな鞍上横山典弘とともに、歴史的偉業達成という“絶景”を見渡せる瞬間は、すぐそこにまで来ていました。
三歳牝馬の後塵を拝するわけにはいかない。
そのブエナビスタをなんとか打ち負かそうとする17頭。
その筆頭である2番人気には、天皇賞秋6着後、早々にこの有馬記念を目標にして、まさにメイチで仕上げてきた愛馬ドリームジャーニー。
5枠9番。宝塚記念と同じ9番を背負った一番小さな馬体。
その上には、もちろん池添謙一。黄色の帽子にお馴染みの勝負服。
朝日杯フューチュリティステークスという二歳チャンピオンの座を最後方から射止めた末脚。
小さい体をめいいっぱい使って、走り続けたクラシック三冠レース。届かなかった夢。
マイル路線での惨敗、騎手の交代、ウオッカやダイワスカーレットという眩しすぎた女傑の存在…
その中で色褪せていた大きな夢が、宝塚記念の最後の直線、黄金色の輝きを取り戻した。
再びピッチを上げて加速する夢への旅路。
旅はまだ終わらない。
その他は、ウオッカの回避などがあって、やや小粒なメンバー構成となりましたが…
一昨年に大穴を開けた“中山の鬼”。ラストランという祭りのクライマックス。再び鬼気迫る走りを見せてくれるか、マツリダゴッホと蛯名正義。
三歳牡馬軍勢の中でも勢いはナンバーワン。この名前、永遠に忘れさせやしない、クリストフ・ルメールとフォゲッタブル。
ジャパンカップでは厳しい結果。けれど、日本ダービー2着のプライドがある。ロジユニヴァースの無念も背負って頂点へ。 リーチザクラウンと武豊。
父の足跡を追い続け、遂に手にした、父と同じ菊の御紋。さあ、次は父を超えてみせよう。菊花賞馬スリーロールスと浜中俊。
風のように鮮やかに制した皐月賞。その後味わった七難八苦。全ては今日のために。おれにライバルなどいない。アンライバルドとミルコ・デムーロ。
昨年3着。GU+FFFDという大きな勲章の影はしっかりと踏んでいる。あとはその末脚で敵を切り裂くだけ。エアシェイディと後藤浩輝。
その他、虎視眈々と機会を窺う8頭を加え、計16頭のフルゲートで、レースがスタートしたのです。
つづく。
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